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男 「やーれやれ、ようやく終わったかな?」
女 「あぁ……」
男 「とりあえず、生き延びたな。お互いに」
女 「辛うじて、ね」
男 「お互いボロボロだよなぁ」
女 「そうだな……この国も随分と荒れてしまった」
男 「そうだなぁ……。でもアレだよ? 荒れちゃったのはオレ達が戦ったせいじゃないよ?」
女 「本当にそうだろうか?」
男 「またぁ、いつもアンタはそうやってさぁ……」
女 「確かにこの国を疲弊させたのは王をはじめとする王族だ。しかし、戦いを仕掛けたのは私達だ。この国を焼け野原にしたのは私達ではないか」
男 「オレ達は引き金にしか過ぎなかったんだってば。引き金を引いたのはこの国だよ」
女 「国が引き金を引いた……?」
男 「そうだ。国ってぇのは 『土地』 と 『人』 で出来てるらしいぜ? だったら、土地と人を弱らせた王に対して国が怒った結果がこれ、ってわけだ」
女 「国が怒った……」
男 「ま、さんざんいじめられた土地と人が怒ったって言い換えてもいいけどな」
女 「そうか。そうなのかもしれないな」
男 「そんなに思い悩むこともないんじゃないの? 気持ちは分かるけどよ」
女 「しかし、こんなに荒れてしまった土地では……」
男 「そうだな……暫くは収穫も落ちるだろう」
女 「見ろ、この国を離れていく人達の姿を。あれはおそらく農民だ。お前は国は土地と人で出来ていると言ったが、人が離れて行った国はどうなる?」
男 「確かにねぇ。だけど王の圧政によって滅んだ方が良かったってぇの?」
女 「それは……」
男 「これはオレ達が始めた戦いなんじゃねぇよ。確かにお前は王を護る近衛兵だったからよ。色々責任なんてもんを感じちまうのかもしれねぇが」

間。

女 「あの者達はどこに行くのだろう?」
男 「そうだな。わかりやすいのは隣の国か」
女 「新しい土地でやり直すのか」
男 「いや、そう簡単な話じゃねぇ」
女 「どういうことだ?」
男 「国を豊かにする農民という人は土地から離れちまったらダメなんだよ」
女 「土地なら隣の国にもあるだろう」
男 「そういうこっちゃねぇんだよ。隣の国の土地はこの国の農民のものじゃねぇだろうが」
女 「彼らはどうなるのだ」
男 「さぁな。流民になるのか、それともオレ達みたいに金で雇われて戦うことになるのか」
女 「そうか。そうだったな。お前達は金で雇われた傭兵だったのだな」
男 「そうだ。戦いが終われば、あの農民たちのようにここを離れてまた戦場を渡り歩くのさ」
女 「お前たちは、何のために戦う?」
男 「オレ達はアンタみたいに難しい立場じゃないんでね。生きていく為に戦う。とてもシンプルだ」
女 「私は……」
男 「どうする? オレ達と一緒に来るか?」

間。

女 「いや、よそう」
男 「そうか」
女 「裏切り者の私をこの新しい国が受け入れてくれるかどうかは分からない。けど、私はこの国を守りたいと思う」
男 「残念だな、アンタほどの腕前がありゃ、オレ達も楽に戦いができるのにな」
女 「ありがとう。だがやはり、私の剣は戦うためのものではなく、護るための剣でありたい。それが私にできる償いだ」
男 「そうだな。きっとこの国もアンタの事を受け入れてくれるさ」
女 「そう願いたいものだな」
男 「さて、オレ達は行くよ」
女 「随分と慌ただしいのだな」
男 「アンタを口説き落とせなかったんでね」
女 「あぁ、すまない」
男 「謝られても困るんだけどね。ま、機会がありゃオレ達を金で呼び寄せてくれ。そしたらちょっとばかりくらいは安くしとくから」
女 「覚えておこう。お前たちの名前は?」
男 「Ravenskill」
女 「覚えておこう」
男 「じゃあな」
女 「じゃあな」