梅雨はあけたのかな?
ついさっきまで雨が降っていた。
それはもう、まさに土砂降りといった感じで。
坂道を雨が走っていく。
泥土や落ち葉を乗せながら走っていく。
色んな物が流されていく。
そういったものを眺めながら、ふと思う。
よく、誰かが言う言葉。
「雨は綺麗に洗い流してくれるから」なんていう言葉。
あれは嘘。
泥土や落ち葉は流されて、単に目の前からいなくなるだけ。
洗い流されたものはどこかに辿り着く。
その辿り着く先はどこなのだろう?
雨はあがったよ。
泥土も落ち葉もここにはいなくなったよ。
けれども、どこかにいる。
決してこの世からなくなったわけじゃないんだ。
風が吹き抜ける。
初夏の風はなんだか落ち着かない。
肌にまとわりつくようで。
空に浮かぶ雲を流していくようで。
わたしをどこかに連れて行こうとしているようで。
「ここではないどこかってどこ?」
そんなあの人の言葉が頭をよぎる。
「ここではないどこか」はどこにもない。
そして、どこでもない。
今を不安に感じているからこそ、ここからいなくなりたいだけなのに。
ここから離れること自体、怖くて仕方がないのに。
雲間から日差しが覗き、眩しいくらいの太陽が地面を照らしはじめる。
泥土も落ち葉もいなくなった地面を照らし始める。
雨水もやがてここからいなくなるんだろう。
地面からゆらゆらと立ち上る陽炎が見える。
雨水が空へと還っていく。
それが見える。
目の前からいなくなる。
でも、やっぱりなくなったわけじゃない。
哀しさも、怒りも全部。
あなたへの想いも全部。
(by 一也)