アヌビスくんとクヌムくんはエジプトの神様です。
クヌムくんは、エジプトの母なるナイル川の神様。
アヌビスくんは、死者が住む冥界の神様。
生と死を司る二人はとても仲良しなのですが、
最近はエジプトの神様として出番も少なく、
暇なので日本に遊びに来ているようです。
雨音
クヌム「雨だねぇ……」
アヌビス「雨だね」
クヌム「止みそうにないねぇ……」
アヌビス「止みそうにないね」
間
クヌム「よく降るねぇ……」
アヌビス「よく降るよね」
間
クヌム「なんで?」
アヌビス「えっ?」
クヌム「なんで?って聞いてるの」
アヌビス「何が?」
クヌム「なんでこんなに雨が降るの?」
アヌビス「なんでって……梅雨だから?」
クヌム「梅雨だと雨が止まないの?」
アヌビス「雨季だしねぇ」
クヌム「雨が降る季節なのか」
アヌビス「そう。だから日本はこんなに緑が多い」
クヌム「なるほど、雨がよく降るから植物いっぱい」
アヌビス「うん」
クヌム「いいなー。エジプトはあまり雨降らないもんね」
アヌビス「そうだね」
クヌム「いいなー」
アヌビス「美味しいお米や野菜もいっぱい育つ」
クヌム「いいなー」
アヌビス「その代わり、雨は止まないけどね」
クヌム「それはやだなー」
アヌビス「我儘だなー」
クヌム「いいなー。だけど、やだなー」
間
クヌム「あっ、あれなに?」
アヌビス「どれ?」
クヌム「ほら、あの葉っぱの上にいるの」
アヌビス「んー……カタツムリかな?」
クヌム「おー、カタツムリー。あれがカタツムリかー」
アヌビス「カタツムリだねー」
クヌム「でーんでーんむーしむーしカタツムリー」
アヌビス「おーまえーのあーたまーはどーこにあるー」
クヌム「つーのだせやーりだせ」
アヌビス「尻かくせー」
クヌム「それ、違うでしょ」
アヌビス「頭を隠してるなら、尻も隠さなきゃ隠れたことになんないでしょ」
クヌム「なるほど……(間)そっかなぁ?」
アヌビス「せっかく隠れる殻があるんだから」
クヌム「殻がないカタツムリも居るでしょ?」
アヌビス「それはナメクジかな?」
クヌム「どう違うの?」
アヌビス「殻があるのか、ないのかの違いだったかな?」
クヌム「ぬめぬめしてるよね」
アヌビス「じめじめしたところに現れるね」
クヌム「(かたつむりの節で)ぬーめぬめじーめじめどっかいけー♪」
アヌビス「どっかいけー♪」
間
クヌム「暇」
アヌビス「うん?」
クヌム「退屈」
アヌビス「あぁ、なるほど」
クヌム「雨は止まないし、外にはでかけたくないし、アヌビスくんは本読んでるし」
アヌビス「うん、本読んでる」
クヌム「だから暇」
アヌビス「雨が止まないんだからしょうがないよね」
クヌム「だからって本ばっかり読まなくてもいいじゃないかー」
アヌビス「日本には晴耕雨読という言葉がありましてな」
クヌム「せーこーうどく?」
アヌビス「晴れの日に田畑を耕し、雨の日には読書をする生活のこと」
クヌム「雨の日には読書をしなきゃいけないの?」
アヌビス「雨の日に田畑を耕すのは嫌でしょ」
クヌム「うん。嫌」
アヌビス「だったら、大人しくおうちで本でも読んでた方がいいでしょ」
クヌム「本を読んでたら眠くなります!」
アヌビス「そういう話じゃないよ」
クヌム「どんな話?」
アヌビス「晴れた日には晴れた日にできるお仕事をして、晴れた日のお仕事ができない雨の日には雨の日に相応しい過ごし方があるってこと」
クヌム「雨の日に相応しい過ごし方……」
アヌビス「ホントは世俗から離れて、心静かに暮らすっていう意味なんだけどね」
クヌム「心静かに暮らす、かぁ」
アヌビス「そういう暮らし、いいよね」
クヌム「ていねいな暮らし的な」
アヌビス「そうそう」
間
クヌム「雨の日は困るねぇ。洗濯物も乾かないしねぇ」
アヌビス「それはホントに困るよね」
クヌム「一昨日、メジェドがずぶ濡れになって帰ってきたんだけどさぁ……」
アヌビス「うん」
間
クヌム「あっ……」
アヌビス「どした?」
クヌム「メジェド乾かすの忘れてた」
アヌビス「えっ?」
クヌム「メジェドー!!!メジェドー!!!」
間
クヌム「うわああああああああ!」
アヌビス「ど、どうした?!」
クヌム「メジェドに!!メジェドにカビがあああああああ!」
アヌビス「うわああああああ!」