アヌビスくんとクヌムくんはエジプトの神様です。
クヌムくんは、エジプトの母なるナイル川の神様。
アヌビスくんは、死者が住む冥界の神様。
生と死を司る二人はとても仲良しなのですが、
最近はエジプトの神様として出番も少なく、
暇なので日本に遊びに来ているようです。
クヌム「うーん」
アヌビス「……」
クヌム「う、うーん」
アヌビス「…………」
クヌム「うーうーーーーん」
アヌビス「あー、クヌムくん?」
クヌム「うぉーーーーーーーーーん」
アヌビス「クヌムくん?クヌムくん?」
クヌム「え?なに?」
アヌビス「さっきからなにを唸ってるの?」
クヌム「あ。ごめん。うるさかった?」
アヌビス「いや、うるさいとかそんなんじゃないけどさ」
クヌム「そかそか」
アヌビス「うん」
クヌム「うーーーーーーーーーん」
アヌビス「あーと、クヌムくんって」
クヌム「うるさくないからいいかなって」
アヌビス「そうじゃなくて気になるの」
クヌム「え?なにが?」
アヌビス「何でうなってるのか」
クヌム「え?ボク?」
アヌビス「うん」
クヌム「唸ってたのはねぇ、これ」
アヌビス「Tシャツ?」
クヌム「そう」
アヌビス「Tシャツがどうかしたの?」
クヌム「ほら、このTシャツ良く見て」
アヌビス「うーん?」
クヌム「これ。ラー」
アヌビス「うん、太陽神ラー」
クヌム「太陽神ラーってちゃんと書いてある」
アヌビス「うん、書いてあるね」
クヌム「だけどほら」
アヌビス「うん?」
クヌム「これはラーじゃないのです。アモン・ラーなのです」
アヌビス「ほんとだ」
クヌム「間違ってます」
アヌビス「だけどこれはなぁ……」
クヌム「まぁね」
アヌビス「日本人が作ってるみたいだし」
クヌム「仕方ないんだけどさぁ。ボク達エジプト神勢としては許せないじゃない?」
アヌビス「言いたい事はわかる」
クヌム「写真で見た時はわかんなかったんだよなぁ」
アヌビス「写真?」
クヌム「通販で買ったの」
アヌビス「なるほど。ポチった時には気づかなかったと」
クヌム「そうなの」
アヌビス「で、現物が届いたら気づいたと」
クヌム「現物見たら分かるじゃない?さすがに。ボク達エジプト神勢だし」
アヌビス「それは……まぁ、うん」
クヌム「これ、ラーくんが見たら怒るだろうなぁ」
アヌビス「見せちゃだめだよ!」
クヌム「やっぱそうだよねぇ」
アヌビス「干ばつが起きちゃうよ!」
クヌム「うん。だめだよね」
アヌビス「でもほら、アモン・ラーくんだって親戚みたいなもんだし」
クヌム「実際見分けつかないしねー。あははははははは」
アヌビス「実際に見ないと分かんないよねー。あははははは」
クヌム「通販って結構さ。こういうことあるよね」
アヌビス「あるねぇ。思ってたんと違うっていう」
クヌム「そうそう。こういう見分けがつかない感じの『思ってたんと違う』」
アヌビス「逆によくそれ気づいたなっていう感じの『思ってたんと違う』」
間。
クヌム「よく考えてみたらないか」
アヌビス「うん。よく考えてみたらないわ」
クヌム「だけど、思ってたんと違うは結構あるよね」
アヌビス「それはあるね」
クヌム「うーん、じゃぁ、こっちはどうかなー?」
アヌビス「Tシャツの他にも買ったんだ?」
クヌム「うん。メジェド」
アヌビス「メジェドのぬいぐるみ?」
クヌム「ほら、かわいいでしょ」
間。
アヌビス「何でぬいぐるみのメジェドと目が合うの?」
クヌム「何でだろうね?」
アヌビス「てか、これ本物じゃない?」
クヌム「なんで本物のメジェドくんがダンボールに入って届くの?」
アヌビス「聞かないで」
クヌム「だよね」
間。
クヌム「返品効くかな?」
アヌビス「メジェドくん泣いてるよ」
クヌム「(笑いを噛み殺しながら)ごめん……メジェドくん」