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アヌビスくんとクヌムくんはエジプトの神様です。
クヌムくんは、エジプトの母なるナイル川の神様。
アヌビスくんは、死者が住む冥界の神様。
生と死を司る二人はとても仲良しなのですが、最近はエジプトの神様として出番も少なく、暇なので日本に遊びに来ているようです。

 波の音
 海鳥の鳴き声

クヌム「どう?釣れた?」

アヌビス「釣れないね」

 間(波の音)

クヌム「どう?釣れた?」

アヌビス「いや、釣れないね」

 間(波の音)

クヌム「どう?釣れた?」

アヌビス「横に居るんだから分かるよね?」

クヌム「うん、まぁ。分かるけど」

アヌビス「すぐ横に居るんだからさ」

クヌム「そう言えばさ」

アヌビス「うん」

クヌム「コロナウィルスってさ、ソーシャルディスタンスが大事って言うじゃない?」

アヌビス「言うね」

クヌム「やっぱそうだよね」

 間(波の音)

アヌビス「どうしたの?」

クヌム「いや、ソーシャルディスタンス?アヌビスくんとの距離、近すぎたかなって」

アヌビス「コロナウィルスってエジプトの神様関係なくない?」

クヌム「そうなの?」

アヌビス「いやだって、ボク達、神様でしょ?」

クヌム「神様だってコロナ罹るの嫌じゃない?」

アヌビス「罹らないでしょ。コロナ」

クヌム「そっか。罹らないのか」

アヌビス「たぶん」

クヌム「たぶんなんだ?」

アヌビス「うん」

 間(波の音)

クヌム「友達って居るじゃない?」

アヌビス「うん」

クヌム「……友達、居る?アヌビスくん」

アヌビス「どういう意味だよ。居るよ」

クヌム「そうか。よかった」

アヌビス「じゃぁクヌムくんとボクの関係はどうなるんだ」

クヌム「友達?」

アヌビス「そうじゃなかったら何なの?」

クヌム「うーん、知り合い?」

アヌビス「知り合いなだけなのか」

クヌム「そこ。そこ」

アヌビス「そこ?」

クヌム「難しくない?」

アヌビス「何が?」

クヌム「友達と知り合いの差」

アヌビス「……なるほど?」

クヌム「よく、心の距離って言うじゃない?」

アヌビス「言うね」

クヌム「何キロメートル離れたら知り合い?」

アヌビス「そういう話じゃないでしょ」

クヌム「アヌビスくんとボクは友達?」

アヌビス「ボクはそう思ってるけど?」

クヌム「アヌビスくんが友達だと思ってたとして、ボクが単なる知り合いとしか思ってなかったら公平じゃないよね」

アヌビス「公平じゃないっていうか、不均衡?」

クヌム「メジェドくんは友達?」

アヌビス「うん?メジェドくんが出てくるの?」

クヌム「メジェドくんがアヌビスくんを友達だと思ってたとして、アヌビスくんがボクを友達だと思ってたとするじゃない?」

アヌビス「うん」

クヌム「だけど、アヌビスくんはメジェドくんを友達だと思ってなくて、ボクもアヌビスくんを友達だと思ってなくて、メジェドくんはアヌビスくんを友達だと思ってたとしてもメジェドくんはボクを友達だと思ってなかったとするじゃない?」

アヌビス「待って。ちょっと待って。メジェドくんが入って話がややこしくなってるんだけど?」

クヌム「さぁ、ボク等は友達だと言えるでしょうか!」

アヌビス「どうでもいいんじゃないかな」

クヌム「どうでもいい?どういうこと?」

アヌビス「ボクがメジェドくんを友達だと思ってなくても、メジェドくんが海で溺れてたらボクはメジェドくんを助けると思うから」

クヌム「……なるほど」

アヌビス「例え友達だと思ってなくても、例え関係性が不均衡だったとしても、困ってたら手を差し伸べる。そういう姿勢があれば、友達かどうかは二の次なんじゃないかな」

クヌム「つまり、友達かどうかはあまり関係ない?」

アヌビス「うん、そう思う」

 間

クヌム「あ、アヌビスくん、引いてる。引いてる」

アヌビス「あっ!ほんとだ」

クヌム「これで夕ご飯が食べられるね」

アヌビス「んんっ。結構大きいぞこれ」

クヌム「さぁ、何が釣れるかなぁ……」

 ザバァッ

アヌビス「メジェド?」

クヌム「メジェドが釣れた……」

アヌビス「なんでメジェドが海に居るの」

クヌム「溺れてたメジェドくんをアヌビスくんが助けたって話?」

アヌビス「えぇー?そこ?」

クヌム「あ、夕ご飯……」

アヌビス「どうしよう……」