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アヌビスくんとクヌムくんはエジプトの神様です。
クヌムくんは、エジプトの母なるナイル川の神様。
アヌビスくんは、死者が住む冥界の神様。
生と死を司る二人はとても仲良しなのですが、最近はエジプトの神様として出番も少なく暇なので、日本に遊びに来ているようです。

クヌム「あーきの夕日に照る山もーみーじー♪」

アヌビス「あー、紅葉の季節かー」

クヌム「こーいも薄いーもーもみじ饅頭たーべーたーい♪」

アヌビス「なんで食べ物の話になるのよ」

クヌム「ここにあるから」

            ガサゴソ

アヌビス「モミジの話じゃなかったの?」

クヌム「食べたくない?」

アヌビス「いや、いただきます」

            はむはむと食べだす二人

クヌム「おいしぃーい!ね?」

アヌビス「はい、おいしいです」

クヌム「モミジってさぁ?」

アヌビス「うん」

クヌム「くれないの葉って書くじゃない?」

アヌビス「うん」

クヌム「どっちが本物なの?」

アヌビス「ほんものって…どっちも本物じゃない?」

クヌム「だってほら、モミジって言ったらどっち?」

アヌビス「どっちって?」

クヌム「モミジって言ったら ”この植物” じゃない?」

アヌビス「あぁなるほど。たしかにこのカエデだ」

クヌム「ほら、それも!」

アヌビス「それも?」

クヌム「これはモミジ?カエデ?」

アヌビス「えーと、正確にはカエデ科カエデ属かな?」

クヌム「じゃあ、モミジは正しい名前じゃないんだ?」

アヌビス「間違いってわけじゃないけど、俗称ってことになるのかな」

クヌム「英語ではカエデとモミジ、なんて言うの?」

アヌビス「どちらも同じMapleだね」

クヌム「日本語難しくない?」

アヌビス「難しいね」

クヌム「で、モミジとコウヨウは?」

アヌビス「さっきのモミジとカエデとは違うパターンだけど、コウヨウは植物の種類ではなく、赤く色づく葉っぱを持つ植物全体、もしくは赤く色づいた状態そのものを示す感じ?」

クヌム「同じ漢字なのに、ヘンなの」

アヌビス「ん、確かにヘンかもしれないけど、これには多分、日本語が2つの言葉が混ざってできた言葉だからじゃないかな」

クヌム「2つの言葉?」

アヌビス「日本語って『かな』と『漢字』があるじゃない?」

クヌム「うん」

アヌビス「『かな』の方が本来の日本語で、『漢字』の方が中国から入ってきたの」

クヌム「中国の漢字と混じったんだね」

アヌビス「だから日本には一つの言葉に対して日本的な読み方と、中国っぽい読み方がある」

クヌム「なるほど。日本的な読み方がモミジで、中国っぽい読み方がコウヨウなのね」

アヌビス「紅葉という漢字は紅のコウと葉っぱのヨウに分かれるから中国っぽい読み方になるんだね」

クヌム「確かに紅葉という漢字のどこまでがモミでどこからがジなのか分からないもんね」

アヌビス「モとミジかもしれないよ」

クヌム「えー、それはヘンだよー」

アヌビス「モミジていう言葉は『もみず』っていう『草木が秋に入って赤や黄色に葉っぱの色が変わる』という動詞から来てるんだって」

クヌム「だから秋に草木が色づいた状態っていう意味が混じってるのか」

アヌビス「そうそう。もともとの日本語の意味が、後から入ってきた漢字にくっついたんだね」

クヌム「日本語やっぱり難しー!」

アヌビス「桜は花見とか言うくせに、紅葉は紅葉狩りとか言っちゃうしね」

クヌム「また新しい謎が出てきた!!」

アヌビス「謎だらけな日本語!」

クヌム「謎だらけって言えば、謎な行動の多いメジェドくんはどこいったの?」

アヌビス「さっき落ち葉の中に埋まってたよ」

クヌム「なにしてんの???」

アヌビス「紅葉を押し花にしたいからって木に登って落ちてた」

クヌム「なんで助けなかったの???」

アヌビス「暖かそうだったから?」

クヌム「もう、アヌビスくん、薄情なんだから」

アヌビス「だいじょうぶだいじょうぶ。たぶん落ち葉の中で寝てるよ」

クヌム「メジェドくーん!おーい!メジェドくーん!」